読者にとって心地よいライトな二次小説を書くための+α

0.はじめに

このページは二次小説を書き始めた者がテクニック等をまとめたページです。
過去にまとめた二次小説をもっと上手く、そして面白くするためのテクニックの続編です。

1.直接的な表現の置き換え

直接的な表現は状況を簡潔に説明しますが、複雑なものを表現することはできず小説では不向きです。
もし直接的な表現を見つけたら、別の表現に置き換えてみましょう。

直接的表現(怒る)をそのまま使用した例

彼女Aは怒っている
彼女Bは怒っている
彼女Cは怒っている
彼女Dは怒っている

修正 怒るを言い換えた例

彼女Aは顔を真っ赤にして頬をふくらませている
彼女Bは手のひらを握りしめながら、机を叩いた
彼女Cは頭をかきむしりながら、大声をあげた
彼女Dは無言でうつむいて、歯を食いしばっていた
直接的な表現を避けるのは以下のような理由からです。

1.文章が簡潔にまとまってしまうため文調が固くなってしまう
2.この種の表現はある意味で作者から与えられる絶対的な情報であり、読者の解釈の余地がない

したがって、改善例では以下の方針で置き換えました。

1.具体的な言葉を別の表現に置き換える
2.客観的立場からキャラクターを観察した時に得られる情報とする
3.キャラクターに特色を持たせるような仕草で表現する

このように置き換えただけで彼女A~Dの個性も見えるようになったのがお分かりでしょうか?
表現を模索するタイミングは語彙を増やすチャンスです。
類語辞典などを活用して表現のバリエーションを増やしましょう。

ポイント1

直接的な表現は文面にせず、場の状況を客観的に説明する表現に置き換えよう。
キャラクターの感情がにじみでている様子を文章にしよう。

2.個性の差別化

先ほどは直接的な表現の置き換えを推奨しました。
特にライトノベルではキャラクターの個性は重要ですから、なるべくキャラが立つ表現にしたいものです。
具体的にどうしたら引き立つようになるでしょうか?

感情と行動が一つの方針に従っている例(違和感あり)

(作者の考え:怒る、すなわち声を張り上げるはずだ……)
(A子とB子が主人公に怒りをぶつけるシーン)

「もうアンタなんか知らないっ」
A子は大きな声で罵倒し、部屋を飛び出してゆく。

「勝手にしろ……悪いのはA子だ」
主人公はため息をつき、そうつぶやいた。

「私も貴方のこと、見損ないましたっ!」
B子も普段では考えられないくらいの大声をあげ、部屋を飛び出していった。

この後の話の展開上、二人とも部屋を飛び出してゆく必要があったとしましょう。
そうなると上の例ではA子とB子の違いはセリフの違いだけです。
確かに二人とも口調に変化がありますが、少しワンパターンな気がします。

それは『怒っている = 声を張り上げる』という一つの方針に従ってキャラが動いているからです。
地の文でフォローしなければ、B子のキャラが崩壊している可能性もあるわけです。

感情と行動をキャラ別に差別化した例

怒りの方針
A子:怒ると暴力に訴える
B子:怒ると沈黙が増え、冷徹な視線を投げかける

(A子とB子が主人公に怒りをぶつけるシーン)

「もうアンタなんか知らないっ」
A子はそう言い放ち部屋を飛び出してゆく。勢いよく閉められた扉が大きな音を立てる。

「勝手にしろ……悪いのはA子だ」
主人公はため息をつき、そうつぶやいた。

「……っ! …………見損ないました」
冷めた目で主人公をにらんで、B子も部屋を飛び出していった。
キャラクターの個性を強調したことで行動に違いが生まれ、多少、違和感が抑えられました。

では同じキャラクターではどうでしょう。これも同様の方法で差別化ができます。
状況が異なる場面での行動の差別化を考えてみましょう。

状況によってキャラの行動を差別化した例

[通常の怒り(テンプレ)]

「このっ! 主人公のバカぁ!!」
振り上げた拳を思い切り主人公に叩きつける。
「うわ、やめろっ、暴力禁止だっ!」

[A子にとっての抑止力が働いている状況]

「このっ! 主人公のバカぁ!!」
A子は拳を振り上げた。ああ、アレがまた来る。

「おねえちゃん? どしたの?」
声がする方を見ると、小さな子供が心配そうにA子を見つめていた。

「ううんっ!? 何でもないの!」

彼女は不自然な笑みを貼り付け、振り上げた拳をそっと下した。
どうやら主人公は助かったらしい。
普段はテンプレの動作でキャラクターを強調しておいて、重要な場面での例外を作ることでキャラクターに深みがでます。

ポイント2

そのキャラクターならどうするかを明確にしよう。
また、その行動が作者の常識で制限されていないか改めてチェックしてみよう。

同じ行動をさせる場合は、キャラクターごとに異なる行動をとらせるように意識しよう。
状況によって行動が変わるので矛盾しない行動をとらせよう。

3.描写の方針

地の文を一人称で書くか、三人称で書くかは作者の表現力に関わる大きな議題の一つです。
ここではそれらのメリットとデメリットをまとめてみます。

まずは、同じシーンで比較してみましょう。

一人称表現

「始めっ!」
それは一瞬のことだった。
彼女が俺の視界から消える。

「せいやあっ!」

俺は背中に衝撃を受ける。背中がビリビリ痺れる。
……いったい何が起こったんだ。
あ、これはヤバい。
……骨が数本折れているかもしれない。

俯瞰視点を得るため、別のキャラクターでの一人称

「始めっ!」

私が合図するや、彼女さんはお兄ちゃんの視界をついて背中に回りこみました。
その動きはまるで女豹です。

お兄ちゃんは彼女さんを見失って動揺しています。
そうしている間にも彼女さんは猫パンチを繰り出しました。

「せいやあっ!」

彼女さんのパンチはお兄ちゃんの背中に突き刺さました。
お兄ちゃんは目に涙を浮かべてとっても痛そうにしています。

せっかく勝ったらお祝いしようと思っていたのに。がっかりです。
……お兄ちゃん弱すぎです。

三人称表現

男と女が対峙している。
両者に挟まれる位置には男の妹が待機していた。
彼女は今回の二人の対決のため審判として呼ばれたのである。

「始めっ!」

開始の合図とともに男が女に突進をしかけた。

だが、対決は一瞬で決まることになる。
女は男の背中に回り込んだのだ。

彼には彼女が消えたように見えたはずだ。
「せいやあっ!」

彼女から正拳突きが繰り出される。
男は何が起こったのか分からないといった様子で目を見開いた。

拳から骨が折れる感触が伝わってきて、女はしまったやりすぎたと反省したのだった。
一般的には一人称は邪道で三人称が高尚とされているようですが、ジャンルによって最適な表現方法は異なると思います。
それぞれの表現のメリット、デメリットを知っておくことで話の構成が難しくなることを避けられるでしょう。

ラブコメではシミュレーション要素が有効で一人称が書きやすく(読者に好まれ?)、
アクションものでは三人称が書きやすいのではないでしょうか。

ところで三人称ではライトな表現はできないのでしょうか? そんなことはありません。
セリフが冗長になりますが一部描写を入れてしまうことで地の文を減らす工夫をすれば良いのです。

三人称でライトにするためセリフで最適化した例

「お兄ちゃんも彼女さんも真剣勝負で頑張ってね! それじゃ始めっ!」

妹の合図とともに二人は駆け出した。

「はあぁああ!」

男が突進を仕掛ける。だが、勝負は一瞬だった。

「へっ!?」

彼の視界をついて女が背中に回りこむ。
男には彼女が消えたように見えたはずだ。

「せいやあっ!」

彼女の正拳突きが男の背中に突き刺さる。
何が起こったのか分からないといった様子で男は目を見開いた。

「……はぁ。お兄ちゃん弱すぎです」

すぐに勝負が決まってしまったからだろうか、妹は失望の目を男に向けていた。

「あ~、ゴメンね。少しやり過ぎちゃった……」

拳から骨が折れる感触を感じ、女は反省したのだった。
ライト表現にするために地の文で説明していた情報をセリフに埋め込んでいます。
心理描写であった内容を、ライトな三人称ではセリフにしてしまいます。

ポイント3

一人称、三人称どちらもメリット、デメリットがあるのでその特性を理解しておくと良い。

一人称は主観的
ラブコメでは主人公から見えるヒロインの仕草を愛でることができる。(読者が主人公になった感覚を味わえる)
キャラクターの主観が伴うので、表現に制限がかかる。
表現がライトになるメリットがあるが、情景描写の難易度が高い。
そのため複数のキャラクターの視点を用いて説明を補うなど工夫がいる。

三人称は客観的
周囲の情景を描写して登場人物を描く。時に主人公の心情を具体化できる(読者は物語を鑑賞する立場にいる)
アクションシーンなど状況を説明する事例に適するが、文調はかためになりやすい。
そのためキャラクターのセリフで感情や状況を説明してライトにするなど工夫がいる。

4.セリフでの説明の描写

ライトな表現にするためには地の文を減らす工夫をすることを提案しましたが、
その流れでセリフでの説明の描写について考えてみましょう。

読者へ説明するためのよくある例

(説明内容: 綺麗な女性は第三王女のシャルロットであり、ゴリラのようは騎士団長ロバートと懇意にしている)

「あそこにいる綺麗な女性は誰だ!?」
「ほう。……あの方はこの国の第三王女のシャルロット様じゃ」
「へぇ……お近づきになりたいものだな」
「ほっほ、騎士団長のロバート様と懇意にされておるようじゃぞ?」
「うへぇ……あのゴリラと!? ありえないだが」
無知なキャラクターと説明するキャラクターのセリフの掛け合いにて説明を行うパターンです。

では以下の様に世界観に関わるような情報を説明したい場合はどうでしょうか?

説明をセリフに埋め込むには無理があった例

(説明したい内容:この世界に魔法は存在する)

「いきなりですまん。この世界に魔法ってあるだろうか!?」
「え……いきなり何っ!? というか知ってますよね?」
「うん、知ってる。この世界に魔法はあるんだよ! 諸君!」
「……誰に言ってるんですか?」
さすがにこのような展開にはできないわけです。(メタ発言を良しとするならばありですが)
無知なキャラが質問を投げかけてそれに別のキャラが答え、読者へ説明するパターンはよく見かけますが、
物語中の誰かが情報を知らない状態にあることが前提条件にあります。

しかし、世界観の説明ではそれができないのです。
世界観は物語の世界の常識であって登場人物は知っています。知らないのは読者だけだからです。

いわゆる無知なキャラが存在しないがために、説明をするシーンが現れずセリフに情報を埋め込めないのです。

ただ、工夫すれば間接的な情報は埋め込むことができます。

間接的な情報を埋め込み説明する例

(説明したい内容:この世界に魔法は存在する)

「どうして魔法が使えるといいの?」
「世界にはモンスターが蔓延っているだろう? そいつらを倒して安全に暮らすためには必要なのさ……」
「うん、分かった。頑張って魔法の勉強するよ!」
登場人物は魔法の存在ではなく必要性を訪ねているわけですが、読者には物語の世界で魔法がどのような扱いなのか伝わるでしょう。
同様に魔法を使っているシーンを先に描写して読者に『この世界には魔法が存在する』と理解してもらうのもありでしょう。

ポイント4

セリフ内での読者への説明はキャラ同士の質疑応答によって行えるが、
無知キャラと説明キャラが不在の場合、説明したい情報の埋め込みは難しい。

セリフに情報を埋め込む場合、作者から読者に与えたい情報を間接的に埋め込む。
しかし、セリフ全体としてはキャラクターが必要とする情報になっていないと不自然になってしまう。

5.地の文での説明

これまではライトな表現な表現にするために地の文を極力減らす工夫をしてきました。
しかし、説明シーンでは地の文を効果的に使うことで話のテンポを良くすることができます。

例えば以下のような例です。

長々とセリフで説明する例

「この世界の生い立ちを説明するね、準備はいい?」
「おう、待ってくれ。 今メモをとるから」
「一度しか言わないからよく聞いてね」

彼女は息を整えると一気にまくし立てた。

「この世界はねモンスターに支配されていた時代があったの。そのモンスターは魔王と呼ばれる存在に束ねられていて隣の大陸を占拠していたのよ。で、そこに人類の勇者が現れて魔王討伐を果たしたの!」

「……お、おう」

地の文で説明をまとめた例

「この世界の生い立ちを説明するね、準備はいい?」
「おう、待ってくれ。 今メモをとるから」
「一度しか言わないからよく聞いてね」

彼女いわく、
この世界は過去にモンスターに支配されていた時代があった。
そのモンスターたちを束ねるトップが魔王であり、隣の大陸を占拠していた。
そこに魔王に対抗しうる人類の勇者が現れ、魔王の討伐を果たしたという。

「――というわけなのよ」
「なるほど」
このほうが要点だけを伝えることができるので作者にも読者も楽な構成となります。

ポイント5

長い説明はセリフに埋め込むよりも地の文で箇条書きにしたほうがスマート。



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