8年後の「中二病でも恋がしたい!」

エピソード3 戦慄のナイトシエスタ 「戦慄のぉ~ナイトシエスタ、結社ナンバーゼロ!」


厨二病。
それは中学二年の頃になりやすいとされている、恐ろしくも愛すべき病のことである。

これは、その厨二病を患ったある少女の物語である。

放課後のチャイムが鳴る。

「夢葉! この後ヒマ? 部活休みなら一緒に遊びに行こうよ!」
「ごめんね! ちょっと用事があって! また今度埋め合わせするから!」

クラスメイトからの誘いを断っているのは富樫夢葉、13歳。現在、中学一年生。
人当たりがよく、何事もそつなくこなす優等生。
クラスから人気もあり、友達もいる。
成績は中の上だが授業が真面目に受けている。

「だが、それは仮の姿。真の私を知るものなどいない」

残念なことに彼女は絶賛、厨二病を患っていた。
夢葉は校舎裏を訪れていた。当然だが辺りには誰もいない。

「しかし、人払いの魔術も簡単ではないとは……マビノギオンをの呪いを受け、魔力が薄れているようだな」

ある戦いで邪王真眼のサーヴァントと交戦中、戦闘魔術「マビノギオン七色の写本 第三章一節」をその身に受けたのだ。
一命は取り留めたものの、呪いの効果が消えていない。そのため、自らの不可視境界線の管理能力に衰えが生じている。
……という彼女なりの設定が存在していた。

「ひとまず、呪いを解くことから始めよう、回復魔法陣を描き、不可視境界線を展開……」
「富樫さん? どうしたのこんなところで?」

声をかけてきたのは
つゆり
五月七日
くみん。この学校の国語教師である。
国語教師であることをその名で表したような難解な苗字。初対面の人は当然、読めやしないので、夢葉は梅雨入りの五月七日と覚えていた。

「ど、どうして先生が?」
「それはこっちの台詞だよぉ~、日当たりのいい場所を探してお散歩していたら富樫さんがいたから……ここはあまり日当たりが良くないからお昼寝には適さないと思うよ?」
「別に昼寝をするために出歩いているわけではないんですけど」
「ん? これ……」

まずい、見つかった!? 一般人に見つかってはならない! 最重要機密が!

「おぉ~~~! もしかして不可視境界線?」
「先生!? 何故!? それを知ってるんですか!?」
「えへへ~~世間は狭いねぇ……すこしお話しようか……」



「モリサマちゃんや凸ちゃんと海に行ったり、花火したり……あ、一時的に邪王真眼を継承したりもしたっけ」

どんな経歴を持つ人物なんだ! こいつ只者ではない! 思わず夢葉は身震いした。
少し昔の話をしようと誘われたのは良かったのだが、その話は夢葉の想像をはるかに超えていた。

「ところで、どうしてこの世界に?」

先生は夢葉のあり方を肯定するでもなく否定するでもなく、ただ興味を持って話を聞き入っているようであった。

「昔、飼っていた猫が突然いなくなったんです」

そのとき私は思ったのだ。不可視境界線を探しに出かけてしまったんだ……と。
泣きじゃくっていた私は聞こえた気がしたのだ。
夢葉よ、不可視境界線を守るのだ。私は不可視境界線を探索するものなり。不可視境界線がなくなりさえしなければ私はまた見つけ出せる。その時にまた会おう。

「それから帰ってきませんが、私は再び会えるように不可視境界線を守って行かなければならないんです」

猫が亡くなる前に飼い主の前から姿を消してしまうのはよくあることだ。
その猫がもう帰ってこないことは彼女も理解していることだろう。
国語教師は確信した様子で夢葉に問う。

「そう。それが富樫さんにとって必要なことなんだよね?」
「必要。私にとって不可視境界線を守ることはあの子が探索する居場所を守るということ」
「そう、それなら私は何も言わないよぉ。それに”きめら”も喜んでるんじゃないかな……」
「!?」

どうしてそれを知っているのか?
口に出そうとしたところで、国語教師は立ち上がった。

「戦慄のぉ~ナイトシエスタ、結社ナンバーゼロ! 五月七日くみん! ってね」
「ナイトシエスタ……」
ポーズを決める国語教師。普段の授業っぷりからは想像もつかないような、はっちゃけぶりに思わず

「さぶっ……」

夢葉は別の意味で身震いしていた。

「あ~~ん! 富樫さんに引かれた! せっかく勇気を振り絞ってやったのに」
「ふふっ! あははは!」

夢葉は笑っていた。少しだけ気が楽になった気がする。



「先生……話を聞いてくれてありがとうございました」
「お礼はいりません! そうね。あなたの国語への興味がちょっとでも上がってくれると嬉しい、かな?」

まったく、どこか抜けているようでも教師であるには変わりないようだ。
まあ、仕方がない。せめて国語ぐらいは頑張るとしますか……。
富樫夢葉はふと、そう思ったのだった。


END


8年後の「中二病でも恋がしたい!」
(二次制作小説)

  • エピソード1 居酒屋での語らい
  • エピソード2 厨二病の継承者
  • エピソード3 旋律のナイトシエスタ
  • エピソード4 境界線上の決闘
  • エピソード5 戦場のアルバイター
  • エピソード6 聖調理人のレゾンデートル
  • エピソード戀1 異世界からの訪問者
  • 8年後の「中二病でも恋がしたい!」設定
  • MMDでも中二病したい
  • にゃんくるオリジナル小説、二次小説一覧