8年後の「中二病でも恋がしたい!」

エピソード2 厨二病の継承者 「くっ……戦うしかないというのか? 悪の教典マビノギオンの呪いを受けたこの身でッ!」


厨二病。
それは中学二年の頃になりやすいとされている、恐ろしくも愛すべき病のことである。

あれから8年後。
あの頃は幼き彼女も今や立派に成長していた。

「この区画は我々が占拠した! ドリィムリーフゥウウウ! シュタインズカタパルトバニッシュメント!」

富樫夢葉は呪文を唱えポーズを構えていた。
中学生になった夢葉は誰に言われたわけでもなく、現在、厨二病を患っていた。

現在、姪っ子の面倒を見ながら、家の部屋の一角を占拠中なのである。

「?」
「ほら、二菜もちゃんと呪文を唱えないと……」
「……じゅもん?」

姪っ子は今年で3歳になる。
いろいろなことに興味を持つこの多感な年齢に様々な世界を教えてあげようと夢葉は躍起になっていた。

「我、不可視境界線管理局の魔術師・
プリーステス
聖調理人
より名を授かりし者。悪名高き黒魔術師モリサマーの教典マビノギオンの呪いを引き継ぐ者……ほら言ってごらん」
「われ……ふかしふかしのろい! のろい!」

言葉遣いはまだ拙いものの、夢葉は二菜に成長の可能性を見出していた。

「ふぅ、まずまずの出来だ。偉いぞ、二菜。これがスラスラ言えるようになればお前も一人前の魔術師だ。精進しろよ?」
「だぁくふれいむますたぁ!」
「何!? その名を何処で!? 二菜! まずいことになったぞ」
「??」
「我が不可視境界線管理局にとってその名は禁忌中の禁忌なのだ。その名を口にすることは死を意味する!」
「パパ!」
「分かっている! ダークフレイムマスターめ! お兄ちゃ……我が兄の精神を乗っ取り闇の炎を使役する闇の王なのだ。我々不可視境界線管理局がその存在を浄化してくれる!」
「やみの、ほのーの・つかいて!」
「何だと!? そんなことまで!? 諜報機関は何をしているんだ!? 情報がダダ漏れではないか! こんなことでは不可視境界線は守れないぞ!」
「ひみつ?」
「そうだ、二菜、そのこと軽々しくを口にするなよ? 我が兄は情報が漏れるのを極度に嫌う、もしそのことがバレれば我が脳髄に制裁のハンドチョップを受けることになるやもしれん!」

「うん!」
「我が師、
プリーステス
聖調理人
よ。聖なる地より見守っていてください! きっとこの子は
プリーステス
聖調理人
の意思を継ぎ、立派な魔術師になることでしょう!」

夢葉は西の方角に向けて立ち祈りを捧げる様に腕を組む、ただ、玄関から見える場所なのが悪かった。家の扉が開いていることに夢葉は気づいていなかったのだ。

「あ~。だだいま。夢葉……悪いな二菜の面倒を見てもらって」
「お、お兄ちゃん……? びっくりした! お帰り、六花お姉ちゃんも……」

腕を組んだところから腕を伸ばして伸びを強行する。少々強引だったが、大丈夫だろう。その場のノリでなんとかごまかせたはずだ。
すぐさま一般人のフリをする夢葉。
不可視境界線管理局に所属する魔術師は一般人に紛れ、決してその存在を知られてはならないのだ!

「ママ! パパ! おかえりなしゃい!」

六花に駆け寄る二菜。退院した六花は久々に会った二菜を抱きしめて頭をなでる。

「ただいま、二菜。随分楽しそうね。なんの遊びをしていたの?」
「やみの、ほのーの・つかいて!」
「あら、懐かしいわね……アナタ。闇の炎に抱かれて……」
「お前まで一緒にやらんで、いい!」
「アウッ! アナタ痛い……」

チョップを受ける六花さん。
なるほど。ダークフレイムマスターの情報は邪王真眼の使い手によりもたらされていたのか……夢葉は確信した。

「夢葉……お前まさか、また二菜に何か吹き込んだんじゃないだろうな?」
「そんなことないよ! 二菜、私は緊急退避する……! しばし通信は遮断するが、私は大丈夫だ。境界線異次元フィールドにて待つ!」
「あ、コラ、夢葉!」

隣の部屋に逃げ込む夢葉。勇太はため息をついた。

「はぁ、夢葉のやつ。二菜がこのまま厨二病化していったらどうするんだ……」
「別にいいじゃない、年頃の女の子は皆そうなんだから」
「お前を基準に話を進めるんじゃない! 夢葉があの調子だから、樟葉から俺が怒られるんだよ……いい加減なんとかしろってさ、はぁ……どうしてこうなった」

六花はその言葉がツボにハマったらしく、こらえきれずにクスクス笑いだした。

「何がおかしいんだよ……」
「だって、それはアナタの影響じゃない?」

当時5歳の夢葉にダークフレイムマスターの存在を知らしめた張本人がここにいた。

「否定できないから、頭がいたいんだ……まあ、お前のせいでもあるがな……」
「それは否定できませ~ん」

邪王真眼の使い手もこれまた同罪。そんな二人の息はぴったりだった。



玄関のチャイムが鳴る。
勇太がドアスコープを覗くとその視界は2つの巾着袋によって埋め尽くされていた。

「……」

犯人は一人しかいないのであるが、一応確認してみる。

「あの、どちら様でしょうか?」
「黄昏よりも暗きもの、血の流れより紅きもの……」
「厨二病は間に合っています。お引き取り願い……」
「冗談デス! 開けるデス! 開けてくださいデス!」

現れたのは凸守早苗だった。

「お子さんが生まれたとの知らせを受けて、この凸守、お祝いにあがったデスよ!」
「ありがとう、この子も喜ぶわ」

腕に抱く赤ん坊はスヤスヤと眠っている。

「あと、コレはおまけデス! 預かってきたので渡しておくデス!」
「お、丹生谷からだ? 絵本か。いい品じゃないか……どうしたんだ?」
「凸守がお祝いに行くと言ったら持っていけとうるさいので預かったデス!」
「そうか、後でお礼の電話をしておくか……」

しばらく話をしていると、設定に飽きたのか夢葉が隣の部屋から出てきた。

「なっ!? 声を聞いてもしやとは思ったが……凸守早苗!? まだ生きていたのか!?」
「おや、久々デスね? そこに居るのは富樫夢葉、いや、ソニョフォーリア! 今日こそは不可視境界線を見つけてやるデス!」
「私をその名で呼ぶな!? くっ……戦うしかないというのか? 悪の教典マビノギオンの呪いを受けたこの身でッ!」
「デュフフフ~~! やはりマビノギオンの効果は絶大のようデスね! しかし、富樫夢葉よ! ここでは一般人に被害が及んでしまうデス!」
「フム、それもそうだな。 ならば外界にて待つとしよう!」
「首を洗って待っているデス! 我らが敵、不可視境界線管理局所属の魔術師、富樫夢葉! 邪王真眼のサーヴァントにしてミョルニルハンマーの使い手、凸守早苗が相手するデス!」
「というわけなので、このあたりで失礼するデス! 夢葉は任せるデスよ。しばらくしたら家まで送り届けるので問題ないデス!」

夢葉を引き連れ? 凸守は部屋を後にする。

「気を遣ってくれたのかしら?」
「知らん……だが、アイツに任せて大丈夫なのか? ある意味心配だ……」

夢葉の設定がより深まるのは避けられない状況だった。

END


8年後の「中二病でも恋がしたい!」
(二次制作小説)
  • エピソード1 居酒屋での語らい
  • エピソード2 厨二病の継承者
  • エピソード3 旋律のナイトシエスタ
  • エピソード4 境界線上の決闘
  • エピソード5 戦場のアルバイター
  • エピソード6 聖調理人のレゾンデートル
  • エピソード戀1 異世界からの訪問者
  • 8年後の「中二病でも恋がしたい!」設定
  • MMDでも中二病したい
  • にゃんくるオリジナル小説、二次小説一覧